WTTカップファイナルズ シンガポール 女子1回戦 平野美宇 vs 陳幸同(チェン・シントン)の試合を解説したいと思います。
世界ランキングは平野が13位、陳幸同が15位ですが、平野にとっては3戦3敗と手ごわい相手です。
個人的な見どころは陳幸同の守備力と回転量のあるバックハンドドライブです。
バック対バックの展開になればほぼ陳幸同が制しています。陳幸同の高い守備力と回転量のあるバックハンドに対して打開策がなかなか見つからない展開が続きます。
1ゲーム目
点数は先に平野、後が陳幸同です。
■0-0
陳幸同サービスからスタートで、バックサイドに純横回転サービス(平野側から見るとバックサイドに曲がる)を出します。平野がバックハンドで処理した場合はバック側に返球されやすくなります。1点目は陳幸同のミドル攻めで1点取られます。平野は2本目のミドルにきたロングサービスに対してバックハンドドライブで対応し得点します。
■1-1
一方平野は相手のフォア・ミドル前に巻き込みサービス(陳幸同からみるとフォアサイドに曲がる)を出します。陳幸同がフォアハンドで処理した場合にはフォア側に返球されやすくなります。1本目はフォア側にきたツッツキに対して3球目攻撃をしかけ、その後バック対バックの打ち合いの展開になり、平野がストレートに外しますがミスをします。平野は2本目もバック対バックの展開に持っていきますが打ち負けます。
■1-3
陳幸同のミドルへの純横回転サービスに対して平野がチキータを決めます。陳幸同はチキータされた後、フォア側から平野のフォア側にハーフロングの巻き込みサービス(平野からみるとフォアサイドに曲がっていく)を出します。バックハンドでは処理が難しくなるチキータのやりづらいサービスで、フォアハンドで処理した時にはフォアサイドに返球されやすいサービスです。平野がフォア側にツッツキをしたボールを陳幸同が空いているバックサイドにドライブを決めます。
※陳幸同は平野がチキータをしてからサービスを出す位置をチキータ封じも兼ねてフォアサイドから出します。
■2-6
陳幸同サービスで平野のフォア前にハーフロングの巻き込みサービスを出します。ここでは平野が少し持ち上げて入れたボールを陳幸同がフォアハンドで平野のバックサイドに打ち抜きます。陳幸同は同じようなサービスを続けて出してきましたが、平野は打たずにツッツキで対応し、バックサイドにドライブを打ち込まれますが、返球して点を取ります。
■3-7
平野サービスで台上ストップの展開になり、フォア前にストップされたボールを平野が綺麗にフリック(台上技術で一般的には上回転にして返す技術)を決めます。
平野はフォア側に長めのサービスを出して相手にかけさせたボールをバックサイドに打ち込もうとしますが、ミスをします。2-6時に陳幸同がやった事と同じ事をしようしたという事です。
■4-8
平野は陳幸同のフォア前にきた巻き込みサービスに対してチキータで対応します。平野は簡単にチキータをしていますが、かなり足をフォア側に持っていかないとできませんし、バックサイドにサービスがくる可能性の事も考えると通常は難しいです。個人的には平野が仕掛けていった好きなプレイです。
陳幸同2本目のサービスは同じくフォア側に巻き込みサービスがきますが、平野はフォアハンドで対応してミスをします。私が陳幸同だったら平野のフォア前チキータをみた後であればけん制も兼ねてバックサイドにロングサービスを出す所ですが、同じサービスを出しました。中国人は同じ事を繰り返して、展開をシンプルにしていく印象があります。相手にやらせる事を徐々になくさせるような戦い方です。
このゲームは陳幸同のミスの少ない3球目攻撃等に対して平野が返球できない展開が続きゲームを取られます。
2ゲーム目
平野はレシーブをバックサイドに集めだして、バック対バックの展開に持ち込もうとしますが、ラリーになっても点が取れず厳しい展開が続きます。
■2-2
平野のサービスで陳幸同がフォアサイドにレシーブする展開では平野にとってはクロスの方が打ちやすいですが、陳幸同にフォアサイドで待たれています。平野はストレートに打ち込もうとしますが、オーバーミスをします。2-3になった後は思い切ってクロスに打ち込み平野が点を取ります。
■3-3
バック対バックの展開になると陳幸同が点を取っており、平野はコースを無理に変えようとしてミスをします。
この後もバック対バックの展開では陳幸同が上手で平野は決めきれずゲームを落とします。
3ゲーム目
■1-4
このゲームでタイムアウトを取るまでは2ゲーム目の流れのままで、陳幸同が完全にバック対バックの展開を制していました。平野は次なる手としてフォア側にきたサービスに対してはじめてフォアハンドで相手のバックサイドにドライブで返球して点を取ります。
平野は3-7でストレートにバックドライブを決める良いプレイを見せますが、打開策が見つからずこのゲームも取られゲームセット。
最後に
陳幸同のディフェンス力と回転量のある両ハンドドライブが光る試合となり、平野選手にとっては厳しい試合となりました。平野選手の今後に期待です!
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