WTTカップファイナルズ シンガポール 男子1回戦 梁靖崑(リャン・ジンクン) vs クアドリ・アルナの試合を解説したいと思います。
個人的な見どころはアルナの強力なフォアハンドです。
アルナは数少ないアフリカ(ナイジェリア)出身で活躍している卓球選手です。この試合時の世界ランキングは13位で、対する梁靖崑は8位です。
破竹の勢いで世界ランキングを上げているアルナの強みは破壊力のあるフォアハンドです。バックハンドは補助的な使い方をしており、昨今のバックハンドを多用する卓球ではありません。
アルナのフォアハンドを使った2球目攻撃、3球目攻撃、カウンター等をみるとフォアサイドにボールを送るのが怖くなりそうです。
梁靖崑はアルナに対して万全の状態でフォアハンドを使わせないような展開に持っていこうとするもののアルナのフォアハンドで対応できる範囲の広さがかなり広く苦戦します。アルナはフォアハンドだけでなくハックハンドも要所でしっかりと決めます。
1ゲーム目
点数は先にアルナ、後が梁靖崑です。
■0-0
アルナがバックサービスを2本ともフォア前に出します。1本目はアルナのバックハンドでの3球目攻撃がミスとなります。2本目は少し浮いたストップ気味のボールをしっかりとフォアハンドで仕留めます。
■2-3
アルナが再びフォア前にサービスしてきたボールに対して梁靖崑は1点目を取った時同様にバックサイドに深くツッツキますが、アルナはバックハンドではなくフォアハンドの回り込み攻撃をして得点します。
■3-4
梁靖崑はフォア前の後にバックサイドを狙ったり、フォアサイド深くにツッツキをしてからバックサイドを狙ったりとアルナにフォアハンドを万全の状態で使わせない展開に持っていきます。
上記のような戦略はバックハンドがあまり得意ではない相手に対しては有効だと思いますので、ぜひ試してみてください。
アルナが得意なフォアハンドを使った展開を梁靖崑が抑える形となり1ゲーム目は梁靖崑が取ります。
2ゲーム目
■1-1
アルナのサービスに対して梁靖崑がバックサイドに鋭くツッツキをしたボールに対してアルナがバックハンドで強打を見せます。バックハンドでもあれだけの強打を見せつけられると動揺するのか結果的にアルナがここから11点連続で点を取ります。
このゲームはアルナのフォアハンドとバックハンド両方が爆発し梁靖崑は打つ手無しの状態となりました。
3ゲーム目
■2-2
梁靖崑はフォアハンドを警戒してバック前にストップをします。台上では梁靖崑が上手な印象です。台上の展開を避けたいアルナは2-3時にはロングサービスに変更して、サービスエースします。
■3-3
梁靖崑はバックハンドでの打ち合いの展開に持っていきますが、アルナが安定したバックハンドをみせて得点します。梁靖崑にとっては厳しい展開ですが、4-3からはアルナのバックサイドにフォアハンドでドライブを打ち込み何とか得点します。アルナはバックサイドに打たれたドライブに対してもフォアハンドで対応しようとしており、フォアハンドの対応範囲の広さには驚きます。
■6-9
梁靖崑3点リードでバックハンドの打ち合いに持っていき、梁靖崑のペースと思っていましたが、アルナが回り込みストレートドライブを決めて流れを変えます。
■9-9
フォアハンドの打ち合いでアルナが制します。フィジカルの強さを感じます。
■10-10
アルナの方がフォアハンドを使った打ち合いでは優勢でしたが、梁靖崑も負けじとパワードライブをみせてマッチポイントとします。
■13-12
一進一退の攻防の末、アルナはこれまで見せていなかったバックハンドでのストレートドライブを決めてゲームを取ります。
4ゲーム目
■3-1
梁靖崑はこれまで回り込みドライブをアルナのバックサイドに集めていましたが、フォアサイドに変更します。それに対してアルナはカウンターで対応します。反応の早さにも驚きです。
この後はアルナの強烈なフォアハンドとプッシュするように打つバックハンドが上手く入り、アルナの勢いは止まりませんでした。
最後に
フォアハンドドライブをメインで使って、バックハンドを補助的に使う選手は徐々に減ってきている中で、まだまだフォアハンドドライブ主体でも戦っていける事を示してくれているアルナの卓球には魅かれます。
一方で1ゲーム目の梁靖崑がアルナに万全の状態でフォアハンドを使わせないような展開をしているため、そのような展開の参考にもなります。
コメント